アバランチプローブの選び方

さまざまな素材、長さのあるアバランチプローブ。何を基準に選んだらいいのでしょうか。

アバランチプローブとは?

アバランチプローブは、雪の中の埋没者の位置と深さを確かめる道具です。雪崩ビーコンで埋没範囲を絞り込んだ後、プローブを刺し、埋没者に当たることで、正確な埋没位置を特定します。

プローブがなければ、掘り出しに時間がかかります。

プローブがなければ埋没者の正確な位置や深さが分かりません。位置が分からないままでは、余計な部分を掘ることになり、貴重な時間を失います。

プローブの有無による救出時間の比較

使用する装備 救出までの時間
ビーコン・プローブ・ショベル 15分
ビーコン・ショベル(プローブなし) 26分

埋没者1人・深さ1mを想定した例で、全ての現場で同じ時間になるわけではありません。

プローブがないことで11分遅れれば、生存の可能性が高い時間内の救助に間に合わなくなるおそれがあります。雪崩埋没では時間とともに生存率が急速に低下します。ビーコン・プローブ・ショベルをそろえ、捜索から掘り出しまで続けて使えることが大切です。

雪崩捜索だけでなく、普段の雪山でも使える道具。

「雪崩捜索のときしか使わないから、出番がない」と思われがちなプローブですが、実は普段の雪山でも役立ちます。シャフトの目盛りを使えば、長いメジャーのようにも使えます。

  • 積雪深を調べる。プローブを刺して、その場所の積雪深を調べます。
  • 積雪断面観測のメジャーとして使う。掘った雪の断面に沿わせ、雪の層の位置や厚さを測り、観察結果を記録する際に役立ちます。
  • 雪のテーブルやイスを作るときに使う。雪を掘って作るテーブルの幅や高さ、イスの座面の高さ・奥行きを決める目安として使えます。

こうした機会に取り出して使うことで、組み立て方やロックの操作、目盛りの読み方に自然と慣れていきます。プローブは、緊急時だけパックから取り出す道具ではありません。普段から使い慣れておくことが、いざというときに迷わず扱うための練習にもなります。日常的に使うなら、軽さに加えて、組み立てやすさ、目盛りの見やすさ、繰り返し使える耐久性にも注目しましょう。

UIAA157規格について

UIAA 157は、雪崩救助用プローブに基本的に必要な要件を定めた規格です。必要な長さがあること、雪に繰り返し刺して引き抜ける強度があること、深さや埋没者に近づいたことが明確に分かることなどを求めています。初めて選ぶときは、この認証が一つの目安になります。

UIAA157規格

長さ・太さ 全長240cm以上、シャフトの外径11mm以上。
深さが分かる目盛り 先端からの深さを読めるように、少なくとも5cmごとに目盛りを付ける。
先端側の色分け 先端側のシャフトを他と違う色にし、掘り出し中に埋没者へ近づいたことを分かりやすくする。
刺す・引き抜くときの強さ 曲げる力や引っ張る力に耐え、シャフトやジョイントが簡単に壊れたり外れたりしないこと。
組み立てと先端の形 無理な力を使わず組み立てられ、先端が雪に刺さりやすさと人への安全性に配慮した形であること。

初めての一本は、UIAA 157認証品を基準に。

仲間による捜索を想定する一般的なBC・雪山登山では260〜280cmが、長さ・重さ・携行性のバランスからおすすめです。組織救助や深い埋没まで想定するなら300〜320cm。確実なヒットを知るには、iプローブのような電子プローブも有力な選択肢です。

長さの理由

UIAA規格の最低長が240cmなのは、雪の中に届く長さだけでなく、雪上で操作するための長さも必要だからです。埋没深の中央値が約1mであることに加え、腰を大きくかがめずに操作できることを考慮しています。約1.5mを雪中に刺しても、240cmなら約90cmが雪上に残る。このように、必要な深さと操作のしやすさを合わせて考えた最低長です。240cmの深さまで無理なく捜索できる、という意味ではありません。

無理のない姿勢でプロービングするため、雪上に約90cm残すという条件で計算すると、次のようになります。身長、腕の位置、斜面や足場で変わりますが、姿勢の目安になります。

30度の斜面で、240cmのプローブを雪面に直角に差した例。

30度の斜面で、240cmのプローブを雪面に直角に差した例(雪中150cm、雪上90cm)
雪中150cmに対し、雪上には90cmが残ります。

プロービングの深さによって選ぶプローブの長さ

プローブ全長 雪上90cmを残す場合のプロービングの深さ 選ぶときの考え方
240cm 約1.5m UIAA規格上の最低長。携行性を重視する場合の選択。
280cm 約1.9m 長さ・重さ・携行性のバランス。
320cm 約2.3m より深い埋没に対する余裕。組織救助も想定する選択。

深い埋没ほど、掘り出しに人数と時間が必要です。持ち運びの軽さと素早く対応できる使いやすさ、より深い埋没に届く余裕。これらを、自分の活動する地形や仲間の人数、救助で担う役割に合わせて総合的に考えましょう。

260cmを個人山行で選ぶガイドがいる理由。

PIEPSの契約ガイドは、プライベートでは260cmを選ぶと言っていました。これは、深い埋没ほど迅速な生存救出が難しくなることと、携行性のバランスを取る個人的な装備の選択例ですが、一般ユーザーの選択にも参考になります。もちろん、全ての人に適用できるわけではありません。より深い埋没まで捜索できる余裕を確保するなら、より長いプローブが有効です。

メーカー独自のマーキング。1m・2mのマークの意味は?

1mは、雪崩事故の埋没深の中央値の目安です。本文で紹介するスイスの統計では、対象となった完全埋没者全体の中央値が1mでした。2mは、ラインプロービングで刺す深さを把握する際などの目安として使えます。

1m・2mのマーキングはUIAA規格にはありませんが、現場で必要な深さをひと目で判断しやすくするための工夫です。

組織救助では、3m以上

ビーコンを装着した人を捜索する「仲間による捜索」と、ビーコンを装着していない人を探す「ラインプロービング」のような組織救助では、求められる使い方が違います。

ICAR(国際山岳救助委員会)では、救助隊が使うプローブとして、UIAA 157に適合する全長3m以上のものをすすめています。ラインプロービングでは、まず深さ1.5mまで、次に位置をずらして2.5m以上へと、段階的に深く探していきます。さらに細かい間隔で探す段階では、少なくとも3m、または手持ちのプローブで届く深さまで確認します。こうした捜索に対応するため、組織救助では長さに余裕のあるプローブが必要になります。

素材について

耐久性を重視するならアルミ、軽さを重視するならカーボン。まずは、この違いから考えると選びやすくなります。

アルミとカーボンの違い

素材 特徴 大きな力がかかったとき
アルミ 耐久性を重視する人に。積雪の確認や訓練など、繰り返し使う場合の候補。 曲がることがありますが、折れにくい傾向があります。ただし、曲がりが大きいと使えなくなり、さらに力がかかれば折れることもあります。
カーボン 軽さを重視する人に。持ち運ぶ負担を抑えたい場合の候補。 強度の限界を超える力がかかると、割れたり折損したりしやすい傾向があります。

耐久性を重視するならアルミ、重さを抑えたいならカーボンが選択の目安です。ただし、実際の強さは太さや構造でも変わるため、素材と合わせてUIAA認証も確認しましょう。

内部のコードにも違いがあります。BDカーボン240は軽量なケブラーコード、BDプロカーボン320は伸びの少ないステンレスケーブルを採用。ケブラーのような繊維コードは、軽量であることが最大のメリットです。一方、引っ張ったときに伸びてジョイントが開くこともあるので、プロービング性能を重視するならステンレスケーブルがおすすめです。

SKIMOレース用プローブは、競技のための専用品。

ピープス カーボン240レース

SKIMO(スキー登山競技)用のプローブは、レース中の重さをできるだけ軽くするための道具です。PIEPSでは「 カーボン240レース 」がこのタイプに当たり、UIAA 157規格は満たしていません。全長は240cmありますが、シャフト径が10.6mmと、規格が求める11mm以上より細く作られています。

競技専用品として軽さにメリットがある一方、硬い雪に繰り返し刺したり引き抜いたりする、通常のバックカントリーでの雪崩捜索には向いていません。軽さだけで選ばず、使う場面に合った強さを確保することが大切です。

レース用にはレース用の役割があります。一般のBCや雪山登山では、救助のために繰り返し使えるプローブを選び、競技用と使い分けましょう。

iプローブ。手の感覚に、音と光の手がかりを加える。

普通のプローブは、先端が何に当たったかを手応えから判断します。氷の塊、木、装備などに当たり、「今のは人だろうか」と迷うことがあります。経験者でも、深い雪の中の対象を手応えだけで確実に区別できるとは限りません。

PIEPS iプローブは先端で送信中の457kHzビーコンの信号を受け、音とLEDでヒットを知らせます。ヒットの判断経験が少ない初心者ほど、感覚以外の手がかりを得られ、経験者であればより速い捜索につながります。

iプローブBTの接近表示とヒット表示

およそ2m以内:断続音と青色LEDの点滅 送信ビーコンが2m以内にある。
先端から最大約50cm以内:連続音と青色LEDの点灯 物理的に身体へ触れる前に、掘り出しを開始できる。

iプローブの長さについて

iプローブは、先端が送信中のビーコンに最大約50cmまで近づくと、音と光でヒットを知らせます。身体へ直接触れる前に位置を絞れるため、iプローブは、通常のプローブより短いモデルを選ぶことができます。

iプローブ220:物理長220cm + 電子的ヒット最大約50cm = 長さ270cmのプローブに相当

iプローブ260なら、同じ考え方で最大310cm相当です。

iプローブ220

iプローブ220を30度の斜面で雪上に約90cm残した例(雪中のプローブ130cm+電子的ヒット最大約50cm=雪面から最大約180cm)
30度の斜面で、雪上に約90cm残した例。

デメリットは、電子機能を備える分、同じ長さの通常型より重くなることです。しかし、iプローブBT220は電池込みで380g、BDのアルミ製クイックドロープロ320は381g。アルミの3mプローブとほぼ同じ重さです。電子的なヒットの分かりやすさを重視するなら、重さも含めて検討しやすい選択肢です。

関連記事: Fastest Rescue System - iプローブを使った捜索方法

自分の使い方から、1本を選ぶ。

迷ったら、次の4モデルを参考に、自分が重視するポイントから選んでみてください。

初めての1本・一般向け

ブラックダイヤモンド クイックドロープロ280

ブラックダイヤモンド クイックドロープロ280

長さ・重さ・耐久性のバランスがよく、一般的なBCや雪山登山に使いやすいオールラウンドモデル

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組織救助・ガイド・深い埋没

BDクイックドロープロ320

BDクイックドロープロ320

深い埋没やラインプロービングまで想定する人に。長さと耐久性を備え、組織救助やガイドの装備に適したモデル

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軽さを重視する人に

BDクイックドロープロカーボン320

BDクイックドロープロカーボン320

320cmの長さを確保しながら、持ち運ぶ重さを抑えたい人に。長さの余裕とカーボンの軽さを両立したモデルです。

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ヒット判断の確実性を重視

ピープス iプローブBT220

ピープス iプローブBT220

音と光でヒットを知らせ、判断を助けます。物理長220cmに最大約50cmの電子的検知を加え、電子的最大長は270cm。短い本体で探索長を確保したい人にもおすすめ。

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プローブの比較

商品名 全長 素材 重量 UIAA157 特徴
クイックドロープロ240 240cm アルミ/ステンレスケーブル 261g 〇 コンパクトで携行しやすいアルミモデル。
クイックドロープロ280 280cm アルミ/ステンレスケーブル 340g 〇 長さと耐久性のバランスに優れる。
クイックドロープロ320 320cm アルミ/ステンレスケーブル 381g 〇 深い埋没や組織救助に対応する長さ。
クイックドローカーボン240 240cm カーボン/ケブラーコード 248g 無し ケブラーコードを採用した軽量モデル。
クイックドロープロカーボン320 320cm カーボン/ステンレスケーブル 320g 〇 長さを確保しながら重さを抑えたカーボンモデル。
ピープス iプローブBT220 220cm アルミ/ステンレスケーブル 380g 無し 電子的最大長270cm
ピープス iプローブBT260 260cm アルミ/ステンレスケーブル 420g 無し 電子的最大長310cm
ピープス iプローブBT300 300cm アルミ/ステンレスケーブル 460g 無し 電子的最大長350cm

選んだプローブを、仲間と使えるプローブへ。

プローブの収納場所に注意する。

パックからすぐ取り出せるよう、スノーセーフティポケットのファスナーを開けたとき、最初に手が届く側へ収納しましょう。取り出しやすさに工夫のある専用袋を除き、収納袋から出してポケットへ直接入れておくと、取り出す手間を減らせます。現場で袋が風に飛ばされると、そちらに気を取られ、救助への移行が遅れることもあります。

組み立てを練習しましょう。

講習会では、プローブの組み立てに手間取る方をよく見かけます。周囲に人や障害物がないことを確かめ、束ねたシャフトを斜面の下方へ投げ出すように広げながら、足元に注意して少し後ろへ下がると、組み立てやすくなります。シャフトが空中でつながるくらいスムーズに展開できるよう、繰り返し練習しましょう。ケーブルをしっかり引っ張り確実にロックします。組み立てだけなら、雪がなくても十分な広さのある場所で練習できます。

ヒットしたら絶対に抜かない!

ビーコンの最小値を示した場所から、雪面に直角に、25cm間隔を目安に四角いらせん状に範囲を広げてプロービングします。ヒットしたプローブは、そのまま残してください。抜いてしまうと、せっかく特定した埋没位置が分からなくなります。講習会でも、思わず抜いてしまう方がいます。「ヒットしたら残す」までを一連の動作として練習し、体で覚えましょう。

条件を変えて、何度も練習する。

PIEPSの対応ビーコンでは、アプリのトレーニング機能で送信のオン・オフや送信アンテナを切り替えられます。複数台を埋めて送信する台数を変えたり、送信アンテナやビーコンの向きを変えたりして、さまざまな条件を試しましょう。機種ごとの対応機能と操作方法はアプリに従い、雪崩の危険がない場所で練習してください。

正しい捜索方法を身につけるために、各種団体が主催する講習会を受けましょう。ビーコン、プローブ、ショベルを持ち、取り出し、組み立て、プロービング、掘り出しまでを、仲間と一緒に練習しておくことが大切です。


 

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