TECHNICAL INFORMATION

雪崩ビーコンを使った完全埋没者の捜索は、現場で非常に強いストレスを受けます。短時間に素早く正確に行動することが求められ、仲間を救うために1秒たりとも時間を無駄にすることができないからです。
今日、雪崩ビーコン、プローブ、ショベル、エマージェンシーキット、ビバーク バッグ(パーティで分担可能)などのスノーセーフティギアを持つことに疑いの余地はありません。さらに、雪崩エアバッグを追加することで、完全埋没のリスクを低減することができます。以下では、雪崩ビーコンとiプローブの理想的な組み合わせにフォーカスします。
多くの雪山を楽しむ方たちは、ウィンターシーズン開幕に合わせて、雪崩ビーコンの使い方を思い出し、新しい電池に入れ、点検を行い、必要に応じてソフトウェアのアップデートを行っていると思います(メーカー保証期間が切れている旧型モデルの場合は、夏から秋にかけてメーカー点検を強く推奨します)。そして、熱心なユーザーは、雪があれば最初のトレーニングも始めているのでないでしょうか。
この時期は積雪量がまだ少なく、20~30cmの深さにビーコンを埋めるトレーニングで満足してしまうことがよくあります。最初のトレーニングとしてはこれで十分かもしれませんが、トレーニングには十分な積雪が必要で、少なくとも1mは必要です!
この深さになって初めて、本当の捜索技術をマスターできているか明らかになります。数え切れないほどの練習や捜索トレーニングを通じて、私たちは、埋没深が1~ 2mの状況で、プローブを確実に「ヒット」させるのがいかに困難かを熟知しています。最終的に捜索者が埋没者にプローブがヒットしているか確認しなければならないからです。その過程で、しばしば数分もの時間が経過してしまいます。
プロの山岳ガイドやスキーガイドの養成課程においても、深さ1.5~2mの雪崩埋没事故を想定した訓練を行う際、従来のプローブで候補生が「プローブによるヒット」に成功するまで数分かかることがしばしば見られます(本来は数秒で済むはずですが)。さらに、試験の際、メジャーで正確に測定された50m×50mの捜索エリアがどれほど広大であるかに、多くの候補生が驚くことがよく見られます。
実戦的な訓練におけるもう一つのポイントは、個々の訓練セッションや試験のたびに、スノーセーフティギアを毎回バックパックに必ず収納することです。そうして初めて、素早い取り出しや迅速な装備の準備が習慣化され、バックパック内の各装備の配置(スノーセーフティギアコンパートメント内でプローブは右側、シャベルの柄は左側など)が自然と身についていくのです。
これらの3アンテナビーコンを使えば、短い講習を受けた後、多くのユーザーは素早く埋没者の近くまで到達することができます。
国際的な4つの捜索段階(シグナルサーチ、コースサーチ、ファインサーチ、ピンポ インティング)の分類のうちシグナルサーチとコースサーチでは雪崩ビーコンがユーザーを適切にサポートしてくれるため、多くの場合とてもスムースに誘導されます。
一方、ファインサーチ(最小値の捜索)とピンポインティングでは、ユーザーに最も多くの訓練とテクニックが必要とされ、ここでも最も多くのミスが発生します。

捜索段階、捜索スピード、捜索精度の概要:
各捜索段階間はスムースに移り変わり、埋没者に近づくにつれて捜索スピードは低下し、その一方で捜索精度は上げなければなりません。
重要なのは、捜索者同士の明確なコミュニケーションと役割分担(複数の救助者がいる場合)です。
この捜索技術では、あらゆるテクニックを駆使することで、捜索時間を大幅に短縮します(ファインサーチおよびピンポイティングにおいて最大60%の短縮)。このシステムは、一人でも、また2人ペアのチームでも運用可能です。2008年に初めてiプローブが発表され、その後数年にわたり継続的に改良が加えられ、現在では「Fastest Rescue System」の中心的役割を担っています。

iプローブを使うことで、プローブを埋没者に直接ヒットさせる必要が無くなります
プローブが本当に埋没者にヒットしているのかどうかわからないという大きな不確実性が解消されます
動作原理
iプローブの先端が埋没者の雪崩ビーコンから50cm以内の距離にあると(カップリングによって異なりますが、通常は30cmから最大50cmの間)、iプローブの電子回路が作動し、ピーーという連続音を発するとともに、プローブ上端の2つのLEDが青色に点灯します。
これで、埋没者に「ヒット」いることが確実となり、すぐに掘り出しを開始できます。これにより、プローブによる物理的ヒットが不要となるため、捜索時間の大幅な節約につながります。
互換性:
iプローブは457 kHz(EN300718)の雪崩ビーコン全メーカーと互換性があります
電源オンとセルフテスト「iプローブ」の起動:
一番上のプローブチューブを片手でしっかりと握ります。もう一方の手でプローブのグリップ/ヘッド部分を握り、クイックロックがカチッとしっかり固定されるまで引きます。
しっかり固定されると、1秒間、連続音(ピーーーーーーーーーーーーーーッ)が鳴ります。

重要:
動作確認:プローブを固定した後、プローブヘッドの2つの緑色LEDが1秒間点灯し(セルフテスト「OK」)、その後、緑色LEDが交互に点滅します(プローブが電源オンで動作可能な状態です)。

接近表示:
iプローブを使用して埋没者の雪崩ビーコンを捜索する場合、捜索者は光と音で最大限のサポートを受けられます。
iプローブの先端から送信側雪崩ビーコンが2m~0.5mの範囲内にあると、iプローブが反応します
■青色LEDが点滅し
■雪崩ビーコンの発信間隔に合わせて「ピッ、ピッ、ピッ」という音が鳴ります
【現場でのヒント】
規則的なビープ音が聞こえる場合は、埋没者が近いことを意味します。音が突然消えた場合は、埋没者から離れたことになります、その場合、iプローブをビープ音が聞こえていた位置に戻してください!!!

検知表示:
プローブの先端が送信アンテナから約50㎝~30㎝の距離にある場合、iプローブが反応します
■二つの青色LEDが点灯し
■ 連続音が鳴ります(「ピーーーーッ……」

「Fastest Rescue System」では、ベーシックなテクニックを活用し、不要な手順を 省くとともに、iプローブを用いて、様々なテクニックを適切なタイミングで駆使します。また、1人で捜索を行う場合と、2人ペアでの捜索(2人チームによる捜索)の違いについても解説します。
【コースサーチ】
雪崩ビーコンのディスプレイ表示が10mを切ったら、スピードを大幅に落とします。
ディスプレイに4m~5mの距離が表示されたら、正確に矢印がまっすぐ前になるようにします。雪ビーコンは腰の高さで腕は前にまっすぐ伸ばします。
【ファインサーチ】
ファインサーチは、表示される距離が3m以下になった時に雪面に雪崩ビーコンを近づけることから始まります。雪崩ビーコンを腰の高さから雪面に近づけます。これは、着陸する飛行機のような動きです。捜索スピードを大きく落とします。ファインサーチでは、立って歩くのではなく、膝をついて前進します。
雪崩ビーコンを持つ手の甲を雪面につけ、ブレーキとして機能させます。これにより、移動スピードは1秒間に30cmから10cmにまで落ちます。これは送信信号がおよそ1秒に1回発信し、受信側雪崩ビーコンの最小値表示は10cmのため正確な数値を得るために必要な速度です。雪面に沿って雪崩ビーコンを移動させ、距離表示が最も小さくなる場所を探します。
距離値が再び大きくなり始めたら、距離表示が最も小さくなる場所に戻り、その位置を帽子や手袋などの金属や磁石を含まない物でマークします。念のため、雪崩ビーコンを腕の長さほど先まで進め、値が再び上昇するか確認します。


焦って雪崩ビーコンを動かすスピードが速すぎると、必ず誤った結果につながります。これは捜索の成否に大きく影響します。これは、雪崩ビーコンを使用した捜索において最もよくあるミスの一つです。
しかし、「Fastest Rescue System」では、従来のプローブを使用する捜索方法のように雪崩ビーコンで十字を描く(十字法)のではなく、iプローブを使って直接十字確認を行います。


最初のプロービングは、マークした地点を雪面に対して90°の角度でプロービングします。ピーーーという連続音が鳴り、プローブヘッドの2つの青いLEDが点灯すれば、ヒットしたことを示しています。
マークした地点でヒットしなかった場合、iプローブを直角方向にプロービングを続けます。最初のプロービングポイントから、約30cmおよび60cm間隔で、左側に2回プロービングを行います。
ここで、ヒットを示す連続音がまだ鳴らない場合は、同じ軸上かつ同じ間隔(中心から30cmおよび60cm)で、右側に2回プロービングを行います。
正確に作業を行えば、この方法により99%の確率で発見に成功します。
もしヒットしなかった場合は、マークした地点を起点に、約30cm間隔で、らせん状または座標系に沿って、iプローブによるプロービングを等間隔に規則正しく拡大していきます。

ヒット!!!
すぐに掘り出し開始!
【コースサーチ】
ビーコンのディスプレイに10mと表示されたら、もう一人の捜索者に対して
「10!」と大声で伝えられる。

もう一人の捜索者はすぐにパックからiプローブを取り出し、セットアップして動作確認を行う。セットアップが完了すると、プローブヘッドの2つの緑色LEDが1秒間点灯し(セルフテスト「OK」)、その後、緑色LEDが交互に点滅する(プローブが電源オンで動作可能状態)。

その間、もう一人の雪崩ビーコン捜索者は捜索スピードを落とし、ディスプレイに4~5mの距離が表示されたら、方向矢印がしっかり前を指すように調整して、正確な方向の特定をします。正確な方向を、手を使って、もう一人の捜索者に示すのが最も効果的です。(矢印に変化が見られる場合は、方向をわずかに修正してください)
距離の数値を大きな声でもう一人の捜索に伝えます。5m……4m……3m……。
雪崩ビーコンは最初は腰の高さでしたが、雪面へ近づけます。
この時点から、立って歩くのではなく、膝をついて進みます。
表示が3m以下になったら。雪崩ビーコンを持つ手の甲を雪に触れ、いわばブレーキとします。
移動スピードを、毎秒30センチメートルから毎秒10cmに落とします。雪崩ビーコンを雪面に沿って進め、距離表示が最も小さくなるポイントを探します。
従来のプローブを使った捜索とは異なり、この段階(ファインサーチ中)から、2人目の捜索者は、雪崩ビーコンを操作している人を追い越し、その前方をiプローブでプロービングし始めます

この時、雪崩ビーコンの方向を基準線とし。幅約80cmの通路の中央からプロービングを始め、次に左側、中央、右側、中央……と(ジグザグのパターンでプロービングを進め、iプローブから連続したビープ音が鳴り、ヒットに成功したことを示すまでプロービングを続けます。

雪崩ビーコンで適切なスピードが維持されていれば、通常、iプローブは雪崩ビーコンが最小値を示す前に、ヒットを表示します。

2人ペアの捜索は一人よりもさらに捜索時間を短縮でき、より速い雪崩埋没者の捜索を考えているすべての捜索者にとって、最適な方法です。
数多くの研修や訓練を通じて得られた、実務経験豊富な専門家による知見:
焦った状況やストレス下では、ファインサーチ時に雪崩ビーコンの移動スピードが速くなりすぎることがよくあります!!!
このような時、適切なサーチスピードを守るよう特に注意する必要があります。ビーコンを持つ手の甲を雪面に接触させ、いわばブレーキとして機能させることにより、移動スピードは毎秒30cmから毎秒10cmに低下します。
・iプローブの電源を入れる際の動作確認を行わない
(セルフテストが「OK」で、LEDが緑色に点滅していることを確認)。
2022年12月、ドイツ山岳協会が実施した2つのインストラクター研修(参加者:TR C スキー登山、TR B スキー高所登山、ZQ スノーシュー登山)において、従来の雪崩プローブとiプローブ(「Fastest Rescue System」)を比較し、プローブが埋没者に到達するまでの所要時間を測定しました。
各シリーズは3回行われ、第1シリーズでは1名が雪崩ビーコンと従来のプローブを使用して捜索を行い、第2シリーズでは同じ手順でiプローブを使用し、第3シリーズではチームで捜索を行いました(1名が雪崩ビーコン、もう1名がiプローブを使用)。
すべての実験は別の1名によって観察され、タイムが計測されました。
実験:
2022年12月10日(グループA)および2022年12月17日(グループB)、いずれもピッツタール氷河にて実施。
8つの異なる送信ビーコン。
埋没深度は80~150cm。
送信ビーコンはエアークッションを内蔵したPiepsトレーニングパッド(50×50cm)に入れ埋設。グループ規模:各11名。
スタート地点は、約20~25mの距離
計測時間は、スタート(雪崩ビーコンのセンドモードからサーチモードへの切り替え)から、プローブによる確実なヒット、あるいはiプローブの連続音の発信までの時間を記録。
| 通常プローブ 時間:分:秒 |
iプローブ 時間:分:秒 |
iプローブ + パートナー 時間:分:秒 |
|
|---|---|---|---|
| グループA | 04:04 | 01:57 | 01:06 |
| グループB | 04:27 | 02:02 | 00:43 |
グループAでは79回の捜索が、グループBでは74回の捜索が実施された。
雪崩による完全埋没事故では1秒を争うことを考慮すれば、測定された時間はその有効性を如実に物語っている。iプローブ(「Fastest Rescue System」)を使用することで捜索時間を実質的に半減させることができ、チームでの捜索においてはさらに大幅な時間短縮が可能となる。
雪崩救助に関する一連のテーマについての最新の詳しい情報は、書籍『Erkennen, Beurteilen, Vermeiden』(2021年初版/Bergwelten刊)に掲載されています。