TECHNICAL INFORMATION
そもそもなぜ冬山には、専用の冬山用登山靴が必要なのでしょうか?
写真1:厳冬期・黒部のラッセル
写真2:ペルーの氷壁
言うまでもなく冬山は気温が非常に低いです。また、一口に雪と言っても、種類も状態もさまざまです。フカフカの新雪にバランスを崩すこともあれば、カチカチのアイスバーンにスリップすることもあります。そのような場面では、冬山用登山靴にアイゼン、スノーシュー、ワカンなどを装着する状況が発生します。また、急傾斜の雪面では靴の前半部を雪面に蹴り込むこと(キックステップ)も必要となります。
そこで冬山用登山靴には次のような性能が求められます。
1. 保温:プリマロフト®等の中綿が入っている
2. 防水:ゴアテックス®やHDry®などの防水透湿素材が使われている
3. 剛性:足の保護、およびキックステップやアイゼン等を装着するために、靴自体に高い剛性がある
12本爪アイゼン
ブラックダイヤモンド セラッククリップ
シングル軽量モデル:マンタテック
シングル:モンブランプロ
シングルゲイター付:ファントムテック
ダブルブーツゲイター付:ファントム6000
【シングル軽量モデル】
アウター(シェル)とインナーの一体型。他モデルと比べると柔軟で歩きやすい。ワンタッチクランポンには非対応で、登攀要素がない初心者向けルートに適しています。
【シングル】
アウター(シェル)とインナーの一体型。ダブルに比べて軽量。日帰りから数泊の冬山登山や、バリエーションルートなどのテクニカルな用途に適しています。
【ダブル】
アウターとインナーの分離型。シングルに比べて保温性に優れます。山のなかで泊まるとき、インナーを取り外してテント内で乾かすことができます。厳冬期の高所登山に適しています。通常の冬山でも、寒がりな人や末端冷え性の人には非常にお勧めです。
【ビルトインゲイター】
アッパーにレザーを使っていないことと、別体のゲイターを使わなくても雪の侵入を防ぐことが出来る為、非常に軽量です。シューレースが露出していないことで雪が付きにくく、透湿性も高いため快適です。一方でアッパーの耐久性はレザーに譲ります。
冬山縦走では、靴の濡れが最も防ぎたいポイントなので、テントで乾かせるダブルをお勧めしたいです。軽量やテクニカル志向の強い登山者はシングルを選びがちですが、ダブルに比べて濡れや寒さに弱いデメリットも理解して、用途にあったモデルを選びましょう。
ここで、スカルパの輸入代理店ブルーシープの社員である神林裕の冬山用登山靴の遍歴を例に挙げてみます。
学生時代:L社プラスチックのダブルブーツ
春山~厳冬期の冬山縦走に使用。5年使用割れは無し。プラスチックなので濡れに強い。しかし、靴が足に馴染むことが無いので、最後まで靴擦れに悩まされた。
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社会人時代①:S社シングルブーツ
10年使用。3シーズン用ブーツだったが、軽さを最も優先的に考えて、テクニカルな登攀に加えて厳冬期にも使用。当然だが、冬山の専用靴に比べて濡れには弱く、足先が冷える。長期縦走の後半は靴の中がずっと濡れていた。
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社会人時代②:シングルゲイター付(スカルパ ファントムテック)。
現在、3年間使用中。足とのフィッティングが良く、登攀性能の高さが魅力。インサレーションが入っているので、3シーズン靴よりも暖かく、縦走も含めて、春から厳冬期まで一足でこなせる。
神林の場合は、体質的に足先の寒さに強いため、保温性能よりも軽量を重視してモデルを選んでいます。また、最近は週末を利用した2~3日間のテクニカルな登攀が多いことも、シングル中綿のファントムテックを使用している理由の様です。しかし今後、厳冬期の冬山縦走を行うようであればファントム6000HDを検討するとのことです。
インソールを外してよく乾かします。汚れを落とし、撥水スプレーを塗布します。
保管は風通しが良く日の当たらないところで、高温多湿を避けます。
基本的には4~5年程度。ミッドソールにコインなどを当て、沈み込みが大きくなってきたら加水分解が始まっている兆候です。
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全ての冬山用登山靴には、メリットとデメリットがあります。自分のやりたい冬山登山を考えて、その登山環境に必要な安全性・保温性を満たした上で、足に合い、無理なく歩き続けられる靴を選ぶことが重要です。